江戸前の鮨とは

2021年9月17日

江戸前の語源

「江戸町中喰物重宝記」とは江戸時代・明治・大正・昭和にかけて、一般民衆が日常生活の実用書として常用してきた書物である。 その中に江戸前と言う言葉は元来鰻屋が使い始めたのを、当時名物店であった地曳きずしが真似し、「江戸前 地曳きずし」が使い始め、後に、鰻屋は江戸前を言わなくなったと記されている。

江戸前鮨とは加工技術

すしダネの産地にかかわらず、「江戸前寿司」と呼ぶことに抵抗がなかったのは、すでに、「江戸湾産の材料のすし」という意味が薄れていたからで、握りずしの代名詞くらいに思っていても間違いはないでしょう。何をもって「正当な江戸前の鮨」とするかを規定することは難しいが、親方、先輩、同業者、文献等から得たものですが、   江戸時代は流通が確立しておりませんので、近場の江戸の海で漁獲されたお魚を美味しく食べられるように又、保存が出来るよう加工技術を施して、「江戸前の鮨」が江戸時代後期に出来上がりました。  加工技術とは生ではなく塩・酢・昆布で〆る。火で焼く・煮る・蒸すというような仕事をしてあることを指すと思うのです。時代と共にお客様の嗜好の変化、加工技術の進歩があり今日のような「江戸前の鮨」は明治・大正時代を経て昭和初期に完成をみました。
お客様に美味しく喜んでもらえる鮨をつくる(漬ける)ための、この洗練された加工技術を「江戸前の鮨」といふうに理解して頂けたら良いのではと思います。

どうせすし屋をやるなら江戸前の鮨に徹する

全てのタネに手を加え、旨味を引き出す鮨を漬ける。 煮ハマグリ、シャコ、アサリの漬け込み。 コハダ、酢アジのオボロかませ。酢で〆たキス、サヨリを昆布〆。イか印籠詰め、蒸しアワビ、煮ホタテ、煮イカは煮詰たタレで。クルマ海老、青柳小柱の甘酢漬け。柔らかな煮タコ(桜煮)。まぐろのヅケ。煮アナゴはスダチと塩、煮ツメで握る。煮ツメしたアナゴのシャリがホロリと崩れるところにたまらない美味しさを感じられる。 「こんな鮨を握れるのは、寿司屋冥利につきます・・・」といったこの道の先輩を思い浮かべます。 そして 「鮨の魅力は一貫食べるたびに別の食欲が刺激されて、「次はなんだろう」と期待する。

江戸前の握りずしは熟成

「すしの旨さとは、その熟れた味にある。すしの基本的味が熟成にあることは明らかである。古代のすしの面影を残していると思われる近江のフナずし、岐阜のアユずしは、重石によって熟成され、京都のサバずしは竹の皮とスダレで締めることにより、大阪ずしは木箱でおすことによって熟成される。江戸前ずしは掌(てのひら)から伝わる温度と、握るという押しによって,江戸前の握りずしは熟成されるのである・・・」

ブランド名「江戸前鮨」

「江戸前」のすしとは江戸の海から生まれ、広く日本各地でつくられている料理であり、ブランドとして定着しているのではないか。 天ぷら、うなぎの蒲焼も同様である。 しかし、江戸の海の魚貝類はアナゴ・コハダなどを除いて量的にも限られている。 大部分は地方の漁場から入荷するものである。 又、江戸前の「前」という用語は別の使い方で「男前」などがある。 江戸前を「江戸らしい」“いき”とか“いなせ”と表現する趣向に通じてもいる。 いずれにしても「江戸前鮨」とは産地は別としても魚貝類で握ったすしで、 日本料理で有り、それぞれのタネに200年の歴史的調理方法が有り独自性がある。 ガリ・ハラン・手酢・ワサビ・等の殺菌力の効用は江戸前の鮨には必要不可欠なものであります。
このような鮨を漬けてこそブランド名「江戸前鮨」を名乗り事が許されるのか。

江戸前の鮨

江戸前鮨の基礎知識